ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

散髪記念日

前髪は横分けにし額および眉を露出させよ、という暗黙の規定なき世界に帰ってすぐ、その前髪をざくざくとがたがたに切りました。スーツを着る必要もなくなったので、油断してパーカーにジーンズで親友を待っていると、彼女は深い色のワンピースにパンプスと…

姉・娘・彼女

「女の子を女の子扱いしてなにがいけないの?」に対しては思うところを書き尽くしつつあるので、これから、そもそも私が女の子ではないという可能性について記しましょう。当記事の題は、私の簡単な自己紹介です。私は女性です。他者との関係において、そう…

時を止めて

広い交差点の対岸を埋める人の群れが、横断歩道を私がほとんど渡り切るまで微動だにしない、という光景を目の当たりにしたので、周囲の時が止まったのかと思いきや、人々がみな手元に夢中で信号機を見上げなかっただけのことでした。たったこれだけのことに…

ひとりで出かけるのが好きです。なかでも、川沿いを歩き、家並みを見上げ、くらくらするのが最近の趣味です。高層マンション、光の洩れる無数のガラス窓、その密集した小さな細胞のひとつひとつに、たとえば味噌汁と焼き魚があり、お気に入りのテレビ番組が…

悪人礼賛

「由来ぼくの最も嫌いなものは、善意と純情の二つにつきる」。いい人まみれの世界で生き延びて、私がふてぶてしくも開かれた場所でものを書きつづけているのは、このことばに始まる随筆のおかげでもあります。 自身と周囲とを比べて焦ったり落ち込んだりする…

ほほえみ

昨日の夜から、さっき家を出るまで、さんざんでした。なにもしなかったのです。なにもしない時間は好きですが、なにもするまいと決めてなにもしないのが贅沢なのであって、なにかしなければと思いつめて、なにもしなかったと振り返るのは苦役に等しいもので…

検閲前夜

昨晩、新しくサブブログをつくりました。書き出しはこうです。こんなふうにしゃべっています。 「好きなタイプ」をたずねられて、10文字程度に凝縮して即答できる人は、多くを望まないひかえめな性格なのか、それとも短いキャッチフレーズに万感の思いをかく…

先生・高校篇

この歳になっても古びた高校の校舎にいまだ足を運ぶ最後の目的は、宇宙人めいた恩師の住む英語科準備室を訪れることなのですが、担任だったその先生が私に「きみは高校生らしくないね。友達としゃべってもつまらないでしょう」と言ったのも、その部屋でした…

あなたはあなた

説明会で知りあった留学経験者が聞かせてくれました。「日本が好きで、日本人も好きってよくしてくれる人がいるけれど、それって私のことではないよなって」。私は深くうなずくばかりでした。「外国籍の方も活躍しています」という文言がくりかえされるのに…

ふつうの人

「変わっているね」と聞かされたときの釈然としない気持ちがどこからくるのか、その答えを、いま掴みかけています。このことばを与えられるのが不服というより、ごくふつうの私にはただ不可解なのです。他の「変わった人」たちと話してみてもやはり、相手に…

装い

服に着られては不格好、着こなしてみせるのだ、と張り切って背すじを伸ばしてみれば、リクルートスーツも悪くないものです。しぐさや話しぶりににじみ出るその人の色が際立つから、似通った服装をさせるのにも意味はあるのでしょう。ただし、ベージュとブラ…

就活は恋愛か

春はあけぼのではなく、女の敵は女ではなく、受験は団体戦ではなかったうえに、両親を見たところ結婚は人生の墓場ではなさそうだから、ちらほらと聞こえる「就活は恋愛」というのも、あてにならないような気がしています。このことばからは、資本主義が恋愛…

宇宙人

「おまえは宇宙人だ」と一方的に告げられるのは、きっとおもしろくないでしょうけれど、「きみは宇宙人だね。私もそうだからわかる」とうなずかれると、すんなり受け止められるものです。 私は宇宙人です。人がそう言ったから、どうやらそういうことらしいの…

続・わたし主人公

私はひとりでに起き上がったのでは決してありません。多くの手を煩わせて布団を這い出た、というのが実際のところです。選ばなかったほうに対する未練と、未知へのおそれを、押し込めてやり過ごすことはできそうにありませんから、それらと見つめあって別れ…

わたし主人公

大学への偏愛をふたつ前の記事にてあらわにした人は、いま、新入社員と呼ばれる未来に淡い期待を寄せています。われながら、そのことがすばらしくおかしくて、とにかく「あのころはよかった」とこの先も口にしない自信だけは、たしかに回復しつつあります。 …

未来へ身を投げよ

持ち物を減らしては悦に入る趣味を持つ私が、昨晩、半透明の袋にまとめたなかに、高校指定のジャージが入っています。これを着ているときの自分はごきげんでないなと思ったときに、処分することが決まりました。 制服も写真も、過去にこだわるたちだから、躍…

書生志望

学年末の課題にかこつけて目をつぶっていた就職活動に、ようやく手をつけました。 すると、私が研究に向かう情熱と才能を備えているか、あるいはとことん勉強がきらいであれば抱かずにすんだ迷いにも、ふたたび向きあう必要が生じました。進学はせず働くと決…

言い訳

ほんとうに好きなら無理をしても会いに来るはず、と責められた経験はないのですが、そう言われたなら、ではあなたのことがほんとうに好きではなかったのだと謝るほかありません。なにによって愛を確かめるかということについて、一般的な原則めいたものをふ…

贅沢な悩み

「贅沢な悩み」なるものが存在するとして、贅沢であるか否かの判断を下してよいのは、悩みを抱える本人ただひとりです。人は人のこころに立ち入れません。「そんなことで別れるのか」「そんなことを気にするのか」などと言ってはなりません。「そんなこと」…

青春

私のなかで、ときめきとやすらぎは同居します。無為と充足も両立します。端正とエロス、老いとエレガンスの仲のよいことも、周りの大人たち、たとえば敬愛する先生を見れば明らかです。愛と束縛とは食べ合わせが悪いと思います。「好きだからそっけなくする…

なんとなく、クリティカル

私は性根がむっつりしていますから、記憶をもっぱら占有したがり、秘密をかたく守る人を愛します。ここに残してゆく日記らしきものは、再読すればかならず覚える羞恥に耐えうるよう、まろやかに調理した上澄みにほかなりません。砂抜きも加熱も済んでいます…

こちら女湯

なぜここにおっぱいがあるのか、ふとわからなくなって、疲れて、狭い浴槽でひとり眠りこけた経験のある人はほかにそれほどいないだろうから、こんな冒頭からいずれ小説を書こうとあたためてあります。私は自分の身体をおおむね肯定し、甘やかすのですが、ラ…

対症療法

たとえば持久走の授業から、好まざる飲み会から、反故の堆積した部屋から、逃れたいのならそれは物理的に可能でありますが、どこへ行こうと私は私についてきます。どうしようもなく自身をもてあますときの、適切な処方とはなんでしょう。 人ぎらい、ある種の…

帰るの?

小学校の試験に、「帰る」を活用させる問題がありました。空欄を埋めなさい、「まだ帰( )ない」というぐあいに。「れ」を書き入れたところ、赤ペンで「ら」に直されました。早く家に帰りたい子どもだったのです。いまなら、先生を口説いて丸をいただくのに…

遅い花芽

腫れるまで自分の眉間を殴ったのは、つい2、3年ほど前のことです。鼻は高くなりませんでした。狂気と滑稽そのものとしか言いようがありませんが、容姿にコンプレックスを抱いていたのです。殴ったり、まぶたを引っ掻いたりするのをやめるまでに買った服は…

ほどく

ばらばらにしてください。私が私としてふるまい、ことばを発したところで、「さすが早大生」「A型でしょ」「やっぱり女の子だね」とあると、返答に窮します。また、他人のすることを気にせずにおけないときは、えてして同じ濁り水に私も浸かっているもので…

猫みたいなコ

クレイジーケンバンドをよく聴きます。ひらログにも曲名や詞を多く引用しました。「男女とはこういうものだ、みたいな歌ってこだひらきらいそうじゃん」とわれながら思うのですが、このおじさんの言うこと、ちょっとわかったりちっともわからなかったりする…

あしたも

なにもない一年でした。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのためだけに、ひとり夏の雪国をめざしたのは昨年のことです。通学定期をはじめて手にしたのは一昨年です。今年はめずらしくどこにも行かないで、同じ改札や街並みを飽かず眺めました。変わらない景…

ここでは間違えて

「間違っていても伝わればいいじゃないですか!」と、素朴かつあまりに切実な問いを、生徒は投げかけてくれます。文法と敬語を学ぶ意味がわからなかったそうです。そうだなあ、伝えるためにはなるべく間違えないことなんだよね。相手がことばの礼儀を重んじ…

抱かれるなど

「抱きしめてもらえるマシュマロ肌」になりたくて求めるのではないのだ、とげんなりしつつ、それなしには越冬できないので、今月もニベアを買い足しました。なんだか「もらえる」のところがいやです。条件つきで抱きしめられるのも、抱きしめられるためにお…