ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

ボヘミアン・ラプソディをもういちど

映画「ボヘミアン・ラプソディ」については、身の上を語るのに利用したきりで、作品そのものの話はここまで避けてきたのですが、大勢がほめたたえたものをずたずたにしてでも、書きたいものを書くとしましょう。 本作は、私からすれば、ライヴ・エイドにいた…

教え子の奢り

高校時代の恩師は、私の卒業論文につまびらかな感想をくれ、会話はいつしかほとんど議論の体をなしはじめ、ひたすら平行線をたどってしぼみつつありました。私も先生もひどく頑固なのでした。私は先生に怒ったのではありませんが、この相似形をみると腹立た…

教団リクルート

就職活動に悩む後輩から寄せられる質問に、なんとかナビにはこんなふうに書いてあるのですが、というようなのが混ざりはじめたので、私はくらくらして、「企業からお金をもらって宣伝する立場ならそう書くほかないからね」と答えるべきか迷い、しかしその事…

生活がへた

私が院に進まないことを驚く友人がどういうわけかあまりに多いのだ、と学部の友人に話しました。その友人もまた、私は進学するものと思っていたようでした。それはなぜか、私は生活がへただからか、とたずねると、彼女はいろいろのことばを尽くしたのち、お…

ふつうのいい人へ

あなたに対する、ありったけの侮蔑、拒絶、退屈の意をこめて、これを書いています。私のいう「ふつうのいい人」の定義をおさらいしましょうか。他人の「あたりまえのしあわせ」を願ったり祝ったりするけれど、その尺度がきわめて私的かつ流動的であることに…

文学部卒業

人間の存在に対して「生産性」を追求する人々は、自身の生存にかかるコストを試算してみて、蒼ざめて発言を撤回するなり、みずからの肉体を片づけるなりするというところになぜ行き着かないのか、ふしぎでなりません。自身だけは、いかなる角度から眺めまわ…

陽画

人の性格を表すのに用いられる「ポジティブ」「ネガティブ」といった語が示すものは、その人が現実をのみこもうとするさいに、いかなる味つけをもって加工することを好むのかということ、すなわち思考の癖にすぎませんから、ポジティブ/ネガティブであるこ…

家のなかでは

かつてこんな問題にぶつかった、と解決したあとでなにげなく投げかけてみると、なぜそのときに話さなかったのか、と両親はうろたえだすので、そのたびに私は、話せなかったのではなくて、話さずにおくことを好むだけなのだ、といった釈明に汲々とすることに…

好きな人の好きな人

2時間近く電車に積載され、はては都心に吐き出されてまで会いたいと思う友達が私にはおり、その人には思いを寄せる人がおり(彼女の好む用語を借りれば「おもいびと」ということになります)、つまり私には、好きな人の好きな人とでも呼ぶべき存在がありま…

無色の交信

高校の同級生に、ずばぬけて頭の回転が速く、あまりに傍若無人な宇宙人がおり、その人とは卒業以来いちども会ってみることなく、LINEのやりとりだけがつづいています。推敲を経ずに言い散らし、思いつきが枯渇したところで、互いに合図もなく黙り込むのが常…

我慢

「我慢のきかない人たちが簡単に離婚する」という意見をあるとき耳にして、このかたは我慢して結婚生活をつづけていらっしゃるのだろうか、と考えましたけれど、たずねはしませんでした。我慢強くないから離婚する、という説はおそらく誤りであると私は見て…

交歓

「どう答えてほしいのかわかるから、適性検査にはたいした意義がない」というようなことを親友がなにげなく言い、自動車学校から「自分のありのままをだせる人です」と診断された私の度肝を抜いたのは、おとといの夜でした。彼女は、自身にいかなる態度や言…

すごいおっぱい

この人もそうであるのか? 女性に性的魅力を感じ、かつ自身も女性として生活していると、こんな疑問がふと頭をよぎります。たとえば、目の前の話し相手が女性で、同性を熱っぽくほめているときにです。その話し相手が「女の私でも惚れてしまう」「私/彼女が…

かわいげ

他人を評価するさい、その人の自己評価を加味するというやりかたが世間では主流らしく、たとえばここ日本では「あの子、自分のことかわいいと思っていない?」が手厳しい批判になりえます。また、近頃は風向きが変わりつつあって、「自信に満ちた人はうつく…

誤読

「交際相手に浮気をされた」という事実のみから、相手の申し開きに耳を貸すことなく「自身に魅力がないからだ」「相手に愛情がないからだ」などの因果関係を導き出す、といったような思考法の突飛さあるいは愚劣さについては、以前にも書きました。私はこの…

薄氷

タルトタタンの並んだテーブル越しに、先生が「将来を、と、こころに決められた方が、もういらっしゃるのですか」といったようなことを、おそるおそるおたずねになったとき、先生と私の関係は、いま、不可逆性の変質を遂げた、とぼんやり思いました。こんな…

狂気の沙汰

「ボヘミアン・ラプソディ」を観て気に入ったキャラクターは、ベーシストのジョンです。「まわりがきーきーしちゃっても、ぽやぽやしているひと、いいよね」と、温厚な人柄を私は不明瞭なことばでたたえました。 ところで、私がバンド活動から遠ざかったのは…

口述試験にて

院には進まないということですけれど、今後とも書きつづけたいと考えているというのは、こちらとしても嬉しく、望んでいることでもあります、あなたはこれだけの卒業論文を書いたのだから、これは、と思うものがまた書けたなら、機関誌にも載せられるでしょ…

人でなし

やわらかな物腰を崩さず、いかなるときも穏やかにふるまう人のなかには、他人への愛情が深いのではなく、むしろ、他人に興味も期待も抱かないからかき乱されることもありえないという種類の宇宙人があり、そのような人々を私は好み、遠い理想としてもいます。…

浮気

交際相手に浮気をさせないためには、浮気をしない相手と交際すること、これにつきます。ほかに手立てはありません。「真実の愛」やら「本能」やらを絡ませてこの問題を論じたてると、聴衆はおもしろいほど食いつくから、筋の込み入った神話はそこらじゅうに…

夜明け

新春を、例年通り、けだるくもてあましています。こよなく愛する時季のあとにやってくるので、どうにも歓迎しかねるのです。年の瀬を待ち焦がれる性癖の持ち主は、まっさらなカレンダーの一枚目に、気の遠くなるような失望を見出します。いま、すでに、最後…

何度でもここに書きつけましょう。人は決してわかりあいません。とりとめのないやりとりに挿入される「わかる」という相槌は、むろん私にとっても快いもので、励ましにも慰めにもなってくれますが、それはあくまで断片的かつ偶発的な共感にとどまるというこ…

卒業論文を出した日

「ごくろうさまでした」と、製本屋の店員さんにほほえみかけられ、深々と頭を下げてから来た道を戻るとき、私は品のよい紺色のハードカバーを思わず抱きしめていました。喉をつまらせて泣くことはできなくもないような気がするほどの、感傷をもよおしたので…

スクープ

いわれなき指図と干渉、およびそれらに「心配だから」「好きだから」を着せかける汗ばんだ手を、私はひどくきらっています。ようは「ふつうのいい人」がだめだというわけです。「ふつうのいい人」は他人の「あたりまえのしあわせ」を願ったり祝ったりします…

テレパシー

いつかのくりかえしになりますが、私は言われたことしか受けとれない病気を患っており、子どものころ、「そうやっていちいち言われないとわからないの?」とかいった叱責に、いつも「わかりません」と答えるほかありませんでした。図書館の寄贈コーナーから…

われ、あり 下

「多様性」の一語を定義することを、私は前回の記事にて注意深く避けておいたのですが、いよいよ、ここではっきりさせることにしましょう。多様性とは、さまざまであること、これにつきます。こんにちの「多様性ブーム」に引きずりだされたこのことばは、不…

変身薬ピル

双方の合意にもとづく性交が招いた望まない妊娠の責任は男性にある、とする態度を私は了解しかねます。なお、当記事のねらいは、他人たちの織りなす個別の事象に立ち入ることでも、「どちらも悪い」と騒ぎたてることでもありません。ただ、責任の免除、言い…

混浴の権利

日帰り温泉のホームページを見ると、貸切風呂の案内に「夫婦以外の男女混浴不可」とありました。その意図は不明ですが、騒がれたり汚されたりするのを防ぎたいのだと推量しています。既婚者であっても、また同性間においても、公共の施設で「ふしだらな」お…

移住計画

セーラー服を焼却し、好まざる集まりには欠席の返信をし、バイセクシャルを公言し、というふうに、矯正と順応のための努力をなげうってからのことです。私は目に見えて身軽に上天気になり、「タイプだ」といういたずらな挨拶を述べる女の子たちさえあらわれ…

皮膚とことば

文豪はことごとく病んでいたとか、画家は奇人ぞろいだとか、あるいはもっと卑近なところでは、文学部は変人のゆくところだとか、まことしやかにささやかれる風説にうなずきはしませんが、その発生のメカニズムを解明することは可能だと思っています。ようは…