ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

待つ

 「サンダルを履いているのに爪になにも塗らないのって、全裸で歩くより罪深いらしいよ」と妹に教わってから、サンダルを履かなくなりました。サンダルのことはいまでも好きで、ぜひともまた履きたいと思っています。ならば、無知を装って罪を犯すなり裸の爪になにか着せてやるなりすればよかろうと考え、後者を選び、マニキュアを買い替えました。その宣告を真に受けたわけではないにしても、どうせお見せするならよいところを、という気持ちが芽生えたのはたしかです。ちなみに当の妹はいわば全裸で歩いています。

 しかしまだ塗ってみません。塗るのは造作ないことですが、乾かせないのです。乾くまで待てないのです。そろそろいいかな、と触ってみたらちっともよくなかったり、起きたらシーツの跡がついていたりして、丹念に塗り重ねた薬剤を(塗ったとき以上に手こずりながら)剥がし、私の裸足には失敗だけが堆積してゆきます。

 待つのは、なにもせずにいるだけのことです。そのなにもせずにいるだけのことが、ひたすらつらく感じられます。待てるのは、ゆとりある大人の必要条件です。華やかなつやつやの爪先を人混みで見かけるごとに、ああ、ちゃんと待てるほうの人だ、と畏敬の念に打たれます。