ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

ささやき

 話し相手に「え? なに?」と聞き返されることが一連の会話のなかだけで何度もあって、そのたびに、たいへんすまなく思います。声が低いうえに小さすぎるようです。聞き手からしてちょうどよいのであろう声の大きさで話すように努めると、自分には少しうるさくて困ります。私は東西線のホームや学生街の居酒屋に足を踏み入れるべき生き物ではなかったのです。

 大きな声を出すのは、私にとって日常的な行為ではありません。早く起きること、走ることのふたつとともに、日々の暮らしにおける三大「うまくやれたらきもちよいのだろうけれど、できないからやりたくないこと」に数えています。

 できることならずっと、夜中にこっそり電話をかけるのと同じ調子で話したい。ささやきあって暮らしたい。いっそ、話さずともよろしい。人のおしゃべりにうなずいているほうが落ち着きます。「ねえ聞いてよ!」なんて、顔を見るなり言ってくる子がいとしくてたまりません。それから、だまったままで隣にいる人と、いつまでもだまっているのもよいものです。いずれにせよ、静かにさせておいてくれる人に甘えて、ぼんやりと見つめている時間をもつのが私の望みです。

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