ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

汚れたノート

 講義のノートは手書きで取ります。スケジュールの管理にも、紙の手帳を使います。ペンで字を書くのと、白い紙を汚すのが好きなのです。ただし、余白をすっかり埋め尽くす趣味はないので、手帳にまっさらな欄のひとつもない週などは生きた心地がしません。

 思い返してみるとおかしなことに、書き損じを許せない小学生でした。きれいに消せなかった間違いのあとが目につくと、そのノートがまるごと気に入らなくなって、数箇所に書き込みをしただけのものでも捨てていました。失敗をなかったことにしたいという、子どもにはありがちな浅知恵と潔癖です。うまく書けたものと、うまくできた記憶としか残したくなかったのでした。

 ランドセルを背負っていたのも10年近く前のことになります。ミミズがのたくったような線を指さし、「ここ寝てた」と笑ってすますだけのおおらかさと図太さを得た私はいま、どういうわけか、なにか書かなければ気がすまないという性癖を有しています。つまずきも興奮も写し取って、講義を受けるごとにノートが汚くなります。汚くなるほどノートがいとしくなるのです。一冊を使いきるまでとことん汚します。