ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

社交音痴

 私はことばを額面通りにしか受け取れない病気です。「言いかたが冷たい」だの「人をばかにしている」だの指摘されながら(しかしその根拠は教わらずに)育ったので、おしゃべりにはときどき、私だけ調子外れの歌をうたっているようだが、どこがいけないのかわからない、というぐあいの居心地の悪さがついてきます。

 「もういいよ」とつぶやく母に「いいんならいいや」とへらへら答えて席を立つと、戻ったときには口をきかなくなっていたことがあります。あのもういいよは、まだよくなかったのでしょう。それから、なぐさめたり、はげましたりも、頼まれないかぎりしませんし、どうやら、頼んでしてもらうのではありがたみがないというものらしいのです。それだけわかっていても、こころからの謙遜とポーズとの区別のつかない私に「そんなことないよ」は使いこなせませんから、やはり「あなたがそう言うのならそれがすべてだ」とお答えします。

 私の友人はなにしろ私の友人ですから、同じ症状の患者ばかりで、うってつけの話し相手に甘える私はいっこうに治りません。授業中に「やる気がないなら帰れ」と叱られて、さっさと帰った同級生はこのうちのひとりです。私もまた「帰れ」を「帰れ」として読解するやりかたを好みます。