ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

「きらい(すき)」

 こだわりなくしゃべれる相手というのが、かつては極端に少なかったような気がします。私がことばを額面通りにしか受け取れなかったせいです。愚直に「そうだね」とうなずくばかりでは不興を買うということは少しずつわかってきましたが、模範解答が「そんなことないよ」に替わる瞬間を察知するのはいまでも苦手です。

 「もういいよ」とつぶやく母に「いいんならいいや」とへらへら答えて席を立って、戻ると口をきかなくなっていたことが何度かあります。怒らせたようです。あのもういいよは、まだよくなかったのでしょう。それから、少女漫画の読解にも自信がありません。ほかの場面のモノローグには「好き」とあるのに、その好きなはずの人に向かって言うのは「大っ嫌い」であったりすると、そこで混乱して読むのを諦めてしまいます。

 気乗りしない社交を絶ってからは、しくじることも減りました。これは私の処世術が磨かれたためではなく、「そうなの? どうして?」と話しあえる人と話しあうことに決めたおかげです。高校の授業中に「やる気がないなら帰れ」と叱られて、さっさと帰った友人はこのうちのひとりです。「帰れ」を「帰れ」として受け取るセンスの持ち主は、うってつけの話し相手でした。