ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

いつか王子様に

 お姫様よりは王子様になりたい子どもでした。一緒に暮らすなら、相手は可憐なお姫様のほうがよかったのです。それに、王子様を待っているお姫様になるのはいやでした。迎えに来てもらうより、こちらから行きたかったのです。

 守られるとか、抱かれるとか、ふたりのあいだに生じる行為において、いつも同じひとりに受け身の助動詞を付することは、私にとってしあわせでもきまりごとでもありません。自在にひっくり返せるようでないと、おたがいに息が詰まってしまうでしょう。テレビドラマに出てくる父親などが口にする「食べさせる」もだめで、聞くたびになんとなく家を出たくなるほどです。私は、いずれだれかとふたりになるとしても、芯のところではひとりで立っていたく、また、ひとりで立てる人としか、ふたりでいたくはありません。

 王子様になれないことはもう、というよりはじめから、わかっています。それに、いまでは、選択肢がたったふたつに限られてなどいないことも、知っています。いま「男らしい」「女らしい」のどちらを言われようと、よい気も悪い気もしません。ただ「あなたらしい」と言われたときには愉快です。意外なときに言われるほど、胸のすく思いがします。