ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

思ひ出す事など

 きわめていじけやすい性向ゆえ、昔の人を歌う歌の多くを受けつけません。「いつか誰かとまた恋に落ちても」のいつかのだれかにはなりたくないのです。そいつをすっかり忘れたらおいで、と拗ねます。しかし忘れさせてやる気概もなく、そもそも忘れさせるなどという発想は粗暴だと思っています。五代くんと響子さんのゆくえも、苦しくていまだ見届けられずにいます。

 友達のなにげない「高校生に戻りたい」にまで、皮膚の内側がざわつきます。いまここに私といるのではいけないのかと、やはり拗ねるのです。いっぽう、「91年のアルバムは最高傑作だった」というふうに、私も昔話をします。そのちっぽけな感慨は、だれにもなんの打撃も与えません。それなのに、他人の素朴な回想に、私のほうはひとり打ちのめされます。いるはずのない相手に張り合おうとするこのこころもちが、理にかなっていないことも、得をしないこともほんとうは知っています。

 少しはものわかりをよくしたく、「くどい」にはじまる台詞を吐くラオウをロック画面に設定したことがありました。とくに効き目はなく、現在は、布団に爪先を沈みこませて立つモデルの、ほくろをひとつずつ数えられそうなうしろ姿に落ち着いています。