ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

祭りのあと

 ひさしぶりに降り立った小さな駅は、夏祭りが終わったばかりだというのに、つつがなく平日の夜を運行していました。過去の日付を記したポスターや、散乱するごみが見当たらないのは好ましいことです。

 祭りにも引き際の美学はあります。街も人も、名残惜しそうにしないことです。次の朝には、なにもなかったみたいにすましていることです。今夜の駅前は、それをよく心得ていました。鼻緒のかたちをした擦り傷をローファーやスニーカーに隠して、前の晩のような高揚感を含まない人いきれにむせながら、家路を急いだ人もあったでしょう。

 かくいう私は、浴衣を脱ぎ捨ててから丸二日近くを、自室のフローリングに寝そべって過ごしました。たたみじわだらけになったパンフレットを指先で伸ばして、においをかいでみると、大学にもアルバイト先にもあるコピー用紙と変わりなく、騒がしい大通りに立ち込めていた香ばしい煙はすっかり消えています。りんご飴の包みを留めていた針金を、折り曲げてみたりもしました。仕事をなくした細い糸は、手ごたえなくぐにゅぐにゅと小さくなります。そいつを捨てに立ち上がるのも気だるく、ごみ箱に投げ入れようとして外しました。やはり、さびしいものはさびしいのです。