ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

悪の美学

 ひさしぶりに映画を観ました。メインヒロインでないほうの美女に惚れ込んでしまったからには覚悟していたことですが、しあわせな終わりかたをしてくれませんでした。映画のなかではだれでも、私が好きになると破滅してしまいます。

 主人公の愛する人を圧倒するほどの存在感を放っていたのは、呪縛、倨傲、嫉妬といった、やっかいな特質をふんだんに盛り込んだ「呪われた砂漠の王女」でした。それらは美女に与えられたとたんに、抗いがたい魅力にすり替わってしまうらしいのです。こちらに向かって歩いてくるシルエットひとつとっても、また鎖につながれた姿までも、だれよりも気高く映りました。

 夢中になってソフィア・ブテラの画像を検索していたところ、乗るバスを間違えて、雨に濡れながらよけいに歩いて帰りました。いつもなら右折する地点を素通りした車の挙動と、はじめて聞く停留所の名前に驚き、とぼとぼと引き返しながら、いちど寝ただけの相手のために命すら投げ出す主人公の心をようやく解しました。美女の手にかけられて、彼は気がおかしくなったのでしょう。あちらとしては、別にたぶらかすつもりはなくて、ただこちらが勝手に狂いだすのだから、すばらしくおそろしいことです。