ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

さらっと弾くな

 ピアノは透明な楽器です。演奏を通して、弾く人の奥のほうをあらわにします。いいときとだめなときは交互にかつ露骨にきて、なんとなく乗れない日というのがどうしてもあるのです。

 手抜きも隠し立てもなしだと心がけて弾いているつもりなのに、もっと感情を表せと先生に言われ続けて10年近く経ちます。最近は「内面の情熱を音にするの」という難題を出されました。いつも、あからさまにはしゃいだりいじけたりしているのに、演奏はよい子でつまらないらしい。さらっとしゃべるのがかっこいいという思い込みのせいで、さらっと弾くことしかできないのかもしれません。もしかして、恥ずかしがって中途半端にやるからかえって目立ってしまう、いちばん恥ずかしいやつになっているのかな。

 弾いていると考えなしに楽しくなってしまうのもいけないのでしょう。どうしてもほしかったのにとか、いちどひっぱたかせてくれとか、まれに思うことはあっても、鍵盤に触れると凪いできます。抱き続けるべき情熱をごまかしては、ほんとうはいけないのだろうけれど、先生の言いつけはいまだ宿題となっています。

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