ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

泣き濡れて

 家を出てすぐの坂を自転車に乗って下る朝6時、ひとりでに涙がにじんでくる季節になりました。寒いのか乾くのか、まぶしいせいか、判然とせず止めようもないから、濡れたまま走って行きます。

 平生から涙の出やすいほうで、むせたり笑ったりするだけでいっぱいになることもあります。一方、不随意に分泌される涙は多いのに、感極まってもほとんど泣きません。卒業式で泣かないなんて冷たいとからかわれたのはひどくさびしく、かえって瞳は乾いてしまうのでした。泣かない者にもこころはあります。私などほんとうは、ストリッパーのうつくしさに涙ぐむほど震えやすいというのに。私にとって、浅草の夜は卒業式よりドラマチックでした。

 俗説のとおり「身体は正直」だったら、さまざまなことが運びやすくなるかもしれませんが、身体いっぱいにこころをあらわす大人などいません。言うことを聞かない身体をなんとか従えようとして、私は布団から這い出し硬い椅子にじっと座り、そのあいだも、せめてこころはどこか離れたところに遊ばせます。だからこそ、私は、人のこころから泣くのが見てみたいと欲してやまないのです。

関連記事

www.kodahira.com