ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

なか/そと

 意外だと言われたときにはいささか不服でしたが、露骨な性描写を好まないので、配られた短編のコピーを読むのは気の進まない宿題でした。明晰であるようにも混乱を招くようにも受け取れる、本文中のことばを借りるなら「居心地のわるい」小説に遭い、感情を害し、恥じ、もっと読みたくなってそれが収録されている文庫本を探しました。

 のちに父親のわからない子を孕む「わたし」が、「未知の動物にかんじるような興味」から接触した相手との交合にて、「わたしのなかにあっても依然として異物で」あるものとして他者を認める、そのあたりの描写に、疲れて体表と口内の水分が奪われそうでした。

 他人の身体がきらいです。動きの視界に入るのも、立てる音も放つにおいも熱も受けつけません。大教室や電車を埋め尽くすのが猫かひよこなら、あるいはせめて扇風機とかならいいのにと思うくらいです。ただの他人でない人のうち、その精神を好いている人のことは身体ごと好きで、なわばり意識がどこまでとけてなくなるかは、私の場合、まったくどれだけ好きかということ次第です。異物として認める身体と抱きあう気は起こりません。私のかたく守るその原則が、絶対の約束ではないとわかったことを、進歩と呼んでも許されるでしょうか。

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