ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

先生

 このごろは、見る人さえなければぼろぼろ泣くようになりました。昨晩など「キャロル」のベッドシーンを観ながらしきりに鼻をすすったのでした。それでやり過ごせたからよかったけれど、涙のこぼれてくる前に堰き止められないときは、もうどうしようもありません。今日の別れ際は、危ないところでした。背を向けて歩き出してから、渾身のまばたきで、ひっこめてやりました。

 広漠たる大学では得がたいとばかり考えていたのですが、私の先生とお呼びしても許されるであろう先生に、私はさいわいにも2年生のとき出会いました。お顔を見られるのは、今年は先ほどした立ち話が最後でした。私のことばのすべてに耳を傾け、ときには感じ入り、進学を勧めてくださった先生に、迷いましたけれど就職しますとお伝えしました。早くどこかに根を張って自分の力で食べてゆきたいのだと、また、読むことも書くこともやめないと言うと、あなたの決めたことがいつもあなたにとっていちばんだ、と先生はお答えになるのです。

 高校を出てゆくのは嬉しいことでした。制服を脱いではじめてなにものかになった自身に、価値といとしさを感じました。それが、いま、卒業というものにかつて抱いたことのなかった感傷に、いっしんに浸るみたいです。