ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

ここでは間違えて

 「間違っていても伝わればいいじゃないですか!」と、素朴かつあまりに切実な問いを、生徒は投げかけてくれます。文法と敬語を学ぶ意味がわからなかったそうです。そうだなあ、伝えるためにはなるべく間違えないことなんだよね。相手がことばの礼儀を重んじる人だったら、まごころをこめて話しても、ことばづかいが間違っているだけで、無礼だとか無教養だとか思われてしまうかもしれない。そんなすれ違いはさびしいよね。こころっていう見えないものを伝えるには、ことばっていうかたちに気を配るのがよい方法になるんだよ。

 などと提案できたらまるで先生みたいだったのに、私はとっさに「それっぽくしゃべれると、いばらなくてもなめられないから、おすすめするよ。みんなのできないことができるとお得なの」と、国語講師らしからぬことを口走ったのでした。どちらも偽りなき本心です。

 ことばの勉強をいやがるわりに、生徒たちはきちんと敬語を使います。ときおり、ですます調がぽろりと落ちて、「でさあ……じゃない、すみません」と焦る瞬間が、かわいくて大好物です。先生と呼ばせるのも大いなる欺瞞のようでぞくぞくしてしまう私にだけは、もっとてきとうにしゃべってくれたらちょうどよいな。

関連記事

www.kodahira.com