ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

クレイジー・オーディエンス

 クレイジーケンバンドをよく聴きます。当ブログにも曲名や詞を多く引用しました。「男と女のKung fu Fighting」などとごきげんに歌うおじさんたちですから、「男/女の二分法から私は逃れたいのではなかったのか」と、愛聴する自分をふしぎにも思うのですが、ちょっとわかったりちっともわからなかったりするなあ、と首をかしげながらも、やはり好んで聴きます。

 というのも、表現者には、共感できる要素よりも、自分にはないうつくしさ、新しさを求めるからです。わからないというだけで、きらいになったりはしません。サティも後期のドビュッシーも、よくわからないままおもしろく弾いています。かわいいものを手の内におさめておくばかりでなく、ときにはままならないものに驚かされたいのです。

 私は所有欲の奴隷ですから、昔の人を想起する詞など、かさぶたをかきむしるような心地がしてだめなのですが、「あ、ぎゅって痛い」といやがりながら、飽かずくりかえしています。音の深み、なぜかいとしくなる猥雑さ、にくいほどの艶、ロマンとドラマ、ひっくるめて好きだから、どこか痛くてどこかきもちよくて、離れがたく、自分で自分をくすぐるみたいに再生してしまうのです。