ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

ほどく

 ばらばらにしてください。私が私としてふるまい、ことばを発したところで、「さすが早大生」「A型でしょ」「やっぱり女の子だね」とあると、返答に窮します。また、他人のすることを気にせずにおけないときは、えてして同じ濁り水にみずからも浸かっているものです。「日本人は」「バンドマンは」と、知ったような顔をして笑っていたことが恥ずかしいから、鏡に映る疲れた顔に自分でどんよりするみたいに、悪意なきことばにさえぎちぎちに緊縛されるのにちがいありません。

 所属から、名づけから、切り離されたいのです。けれど、そうやって私から立場という持ちものを引き剥がしていったら、最後、裸身になにひとつ残らないことも、たやすく想像できます。もちろん連帯感をなぐさみにすることだってあります。生まれたときから決まっていたのと、選び取ったのと、種々の絡みあった紐に取り巻かれ、身体をおおい隠して、肌に跡がつくのを厭いながらも、それらを手離さずにいるのです。

 たった一度、ぜんぶほどいて、ひとり連れ去って、ほかにだれもいないから「あなた」「わたし」のほかに呼びかたを考えなくてよい離れ小島のようなところに、一週間ほど眠ってみたい。