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先生・高校篇

 この歳になっても古びた高校の校舎にいまだ足を運ぶ最後の目的は、宇宙人めいた恩師の住む英語科準備室を訪れることなのですが、担任だったその先生が私に「きみは高校生らしくないね。友達としゃべってもつまらないでしょう」と言ったのも、その部屋でした。高校生らしさとはなんですか、と質問できるほど、打ち解けてはいなかったころであったと記憶しています。

 先生は、私が、はたから見ればまるで突拍子もない決断を下し、その事後報告をするごとに「うん、小平らしい」と笑うのでした。「早稲田の文学部?」「はい、おもしろそうなので」「いいじゃん」。夏の進路面談はこれでおしまいでした。「院に行きたいのです、でも両親には悪いような」「おお、親不孝しろよ」。同窓会での会話はこれきりでした。やはり働きますと伝え、第一志望を紹介したときには、唐突さとニッチ志向がいかにも小平だ、というような返事がありました。

 先生の「小平らしい」は、会話中の任意の箇所に思いがけず挿入されるので、先生がひとり納得しておもしろがる一方で、私には私らしさなるものがますますわからなくなります。ただ、先生が一度たりとも「小平らしくない」と決めつけなかったことは、たしかです。

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