ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

オント

 いまをときめくバンドのボーカルが「過去の思い出をどこまでも美化してしまう」と綴っているのを目にして、この人の書く詞が多分に含んでいる無反省と、情緒を酒の代わりとした悪酔いはここからくるのか、とひとり納得しました。かくいう私には過去を、正しくは過去のおのれを、いうなれば醜化する性癖があります。どちらの態度も、その極端さにおいてはひとしいものです。

 過去を美化するさい、人はいかに、痴態を演じた自身と仲直りをするのでしょうか。おとといのしくじりをすっかり焼却することでかろうじて顔を上げているような私が、貧しい想像力を動員して立てた仮説は、次のとおりです。一.恥ずかしいほうが燃えるのでかまわない。二.現在と比較したところ、相対的に明るく見える。三.自意識は記憶から消え、「あの横顔」や「あの夜」だけが加工を経て保存されている。

 ただし、そもそも、過去のおのれを恥じる行為が普遍的なものなのかどうかさえ定かでないので、上述のことがらは前提からして的外れであるとも考えられます。〈恥じる〉という、私が前髪を切るより頻繁におこなう日常のしぐさこそ、悪酔いにすぎないのかもしれないのです。過去をうつくしくもみにくくも歪めようとしない、まっすぐなまなざしに、私は憧れています。

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