ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

狂気の沙汰

 「ボヘミアン・ラプソディ」を観て気に入ったキャラクターは、ベーシストのジョンです。「まわりがきーきーしちゃっても、ぽやぽやしているひと、いいよね」と、温厚な人柄を私は不明瞭なことばでたたえました。

 ところで、私がバンド活動から遠ざかったのは、「ぽやぽや」とはいいがたい自身に嫌気がさすからです。部員あるいはメンバーとしての私は、卑屈で、忙しく、親切心から差し伸べられた手を振りほどくことに汲々としており、ようは、いやなやつでした。社会性が欠落しているくせに小規模の組織に身を投げたのだから、地球人たちのあいだですり減るのも当然です。そのわりに、熱に浮かされて長くつづきました。サークルに加入しなかったのは、正気を取り戻しつつあったおかげです。むろん、これらの形態や文化になんら不備はありません。私が足りない人間だったというだけのことです。

 しかし、ステージにあったすべて、なぜか厭わしくない人いきれ、ひとりでに跳ねるからだ、いちめんの光、目と目、融けあった感じ、をふと思い返すと、人ぎらいの倦怠を忘れ、ふたたびライブハウスに引きずりこまれそうにもなります。音楽にまだ、とりつかれているのです。中学生の冬、ベースを手に取ったのは、きわめて大規模かつ幸運な事故でした。