ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

無色の交信

 高校の同級生に、ずばぬけて頭の回転が速く、あまりに傍若無人な宇宙人がおり、その人とは卒業以来いちども会ってみることなく、LINEのやりとりだけがつづいています。推敲を経ずに言い散らし、思いつきが枯渇したところで、互いに合図もなく黙り込むのが常です。

 私が誤って人里に出て、部活動に励み、予備校に通い、規範に従順な生徒をしているのをよそに、彼は自身の持ちものを正確に把握してか、あるいは欲求に従ってか、学校を休めるかぎり休み、そうでなければ遅れてやってきました。話し相手を欠く日が多くて退屈でした。彼の率直かつ不必要な言動には何回か腹を立てましたけれど、彼は善良な小市民よろしく私に指図をし、軽蔑させることが決してありません。

 彼に対して、私はきわめて特殊な感情を抱いています。それは仮定の域を出ない仮定です。万が一、彼のからだが、たとえば虎なり機械なりに取って代わられたとして、彼が望んだ結果であったなら、そして従来通り文字列を送りあえたなら、私は少しの打撃も受けないだろう、と折にふれ思うのです。顔も声もない、脱色されたことばだけの彼も彼であるという感触は、私ひとりにとっては強固かつ痛快ですが、話せば「悪趣味」と一蹴されるでしょうから、打ち明けはしません。