ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

文学部卒業

 人間の存在に対して「生産性」を追求する人々は、自身の生存にかかるコストを試算してみて、蒼ざめて発言を撤回するなり、みずからの肉体を片づけるなりするというところになぜ行き着かないのか、ふしぎでなりません。自身だけは、いかなる角度から眺めまわしても必ず正の符号をもっている、と決め込んでいるなら、おめでたいかぎりです。

 そういった選民からみて、私などは生産性なき異物そのものであると思われます。「流行りの」性的少数者にして、「実学ではない」とのかどで焼き滅ぼされようとしている文学部を、じきに出てゆくのがこの私です。「生物としての正解」からも「日本社会の要請」からもはみ出した私は、しかし、キャンパスのなかでは、深く息をつくことができました。ここでは「ふつう」も「まとも」も信仰の対象にならないのです。愛する学友と恩師に接して、幾度となく目のさめるような思いをし、浅慮を恥じ、頭をしびれさせながら、いつでも満ち足りていました。

 先生からいただいたメールを、送辞として銘じましょう。「小平さんが豊かな深い思いとともに、ご自身の道を歩んでいらっしゃいますお姿を心に思い描いております。KさんがKさんでありますことを──」。