ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

考える人

 頭の悪いふりをするのは悲しいことです、とエマ・ワトソンがスピーチで発言したとかしないとかが、少し前に話題になりました。真偽についてはわかりかねますけれど、いずれにせよ私は反響の大きさに驚き、「悲しいこと」をせねばならない人々、あるいはせよと教わってきた人々のじつに多いことを思って悲しみました。

 「すこしできが悪いくらいのほうがかわいがられる」と、助言のかたちをとったおつもりで私にご自身の嗜好を露呈した大人は、さいわいなことに、ほんのわずかでした。これは、「ばかな私にお似合いのばかな子にしか魅力を感じない」を言い誤ったものでしょう。

 「あなたは頭がよすぎて、考えすぎて死んでしまわないか」と、家族が私を心配して言ったことがあります。この人も「悲しいこと」に身をやつしてきたのだ、と私は憤りました。私はどちらの〈すぎる〉にも当てはまらず(私には、他人を「考えがなさ〈すぎる〉」と断ずるつもりはありません)、考えなしに生きてゆくよりは、考えぬいて死ぬほうが幸福だとも思っている、と答えたとき、声がかすかに震えました。私は、とびきり賢い人を、いいかえれば、賢くなりたいという志向、希望を抱きつづけ、考えぬく人を愛します。そして、その人の望むかぎり、ともに生きぬくつもりです。