ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

歓迎会

 自発的に会社をやめることは、結局のところないのだろうな、と思った。歓迎会の最中だった。私は、感じのよい人には簡単にほだされるし、どちらかといえば勉強好きであるし、(実際に責任を全うしているとはいわないが)責任感の稀薄なほうではないから。

 悪くない飲み会だった。騒がしいのと蒸し暑いのがだめで、疲れるのはいつものことだけれど、ひどく感情を害することばは聞いていない。めいっぱい歓迎の意を表されて、くすぐったいほどだった。「私たちの考えは凝り固まっているに違いないから、新鮮な感覚をもって、なんでも意見してほしい」とか「忙しそうに見えても、つかまえて質問してくれたら喜んで答えるよ」とか聞いて、はっとした。あと一〇年ここで働きつづけたとして、私に同じことが言えるだろうか?

 みずからビールを注いで回っていた部長は、「仕事、家庭、趣味、どれかひとつになってはつまらない。仕事一筋なんて言わない、趣味を捨ててはいけないよ」とくりかえした。うなずく私の生活には、そうするための余白がない。会社勤めをやめたい理由はほとんどそれだけで、仕事がきらいなわけでも部署の人々と縁を切りたいわけでもないから、「勤務時間が週四日・一日六時間だったら」とささやかで切実な空想にふける。