ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

切りたての髪

 髪を顎のあたりまで切った。浴室を出てすぐベッドに倒れ込みたく、いつまでも乾かない長い髪が煩わしかった。ショートヘアがしっくりこないことは熟知していたが、気に食わなければまた伸ばしたらよろしかろう、と結論して切った(私は美容院が苦手なのに、髪の伸びが異様に速い)。そして毎度、ほんとうに気に食わないから伸ばして、二、三年が過ぎる。今回もそうする。

 カタログの写真が帯びている、空気を含んだような軽やかさ、すきま、遊び。それに憧れて髪を切るけれど、再現できたためしがない。きっと髪質のせいだ。くせがほとんどなく、柔らかいから、アイロンやワックスを使って加工しても、一時間も経たないうちに真下へ垂れ落ちてくる。さわりごこちがよいところと、湿気をものともしないところは気に入っている。きょうのような荒天でも、しかもプロにセットしてもらったばかりだというのに、慇懃に行儀よくまとまって、ちっともくつろいでくれやしない。

 いな、まだ悲観するには早い。周囲の目はどうあれ、切りたての髪はえてして、当人に滑稽な印象を与えるから。梱包をほどいたばかりみたいなしらじらしさが、明日の朝、人に会う前には霧消しているかもしれない。帰ったら前髪をざくざくとがたがたに切り直そう。