ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

ゆっくりしてね

 心因性の故障を引き起こしやすい自身のことを私は「破れやすい」と形容するが、これには直接の起源があり、私の左耳の鼓膜には穴が開いている。幼少期、塞がることを見込んで切開手術を受けたものの、そのまま残った痕だ。大学受験のような強いストレスに晒されつづけると、繊細な左耳の鼓膜はひとりでに破れる。軽度の場合、破れはしないが、閉塞感があらわれる。

 出社したとたんに左耳の聞こえが悪くなり、病院に行きますので、と詫びて早退した。電車を降りると症状はおさまっており、会社にいるあいだだけ露骨に音を上げるからだには、勘弁してほしいとみずから思った。「自律神経の乱れ」を指摘され、「不安や緊張を取り除く薬」を処方され、「ゆっくりしてね」と見送られた。私が抱えているのは疲労と倦怠だが、あるいは、服薬によってそれらも癒えるかもしれない。

 スーパー銭湯とどちらに行くべきか迷って、猫カフェを訪れた。助言に従い、ゆっくりするためだ。そこで、早退するほどの不調ではなかった、などとは微塵も考えない自身に出くわす。誠実さを全方位に照射することはできないというのが私の持論である。「社会人の常識」に背こうと、私はだいいちに守るべき私の健康に誠実であるほかない。ほんとうはあすも眠っていたい。