ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

湯宿にて

 温泉施設の食事処にてこれを書いている。はちみつレモンサワーの氷はいまにも溶けきりそうだが、水位はまだ半分を切らない。私は下戸で、飲み残しを引き受けてくれる人は、きょうはない。ひとりで来た。ひとりで食べてもうまいものはうまいと感じる体質なのだ。海老が三本も乗った天丼と、赤だしの味噌汁とお新香を遅々としかし着実に平らげた。

 うっすらと汗をかいた。もういちど露天風呂に浸かっても、浸からなくてもかまわない。それだけのことがしみじみと嬉しい。このあとなにをするか、あるいはなにもしないか、あらかじめ決まっていない日が好きだ。余白からなる生活への憧れがますます募る。チェックインを済ませたのは一五時で、ほんの少しまどろむと一九時半になっていた。土曜日はいつもそうだ。負債を返すみたいに寝ている。ほとんど気を失っている。大勢の他人たちからみて、いかに模範的、健康的であろうと、いまの暮らしは私に向かない。一定の起床時刻と毎朝通うべき場所の存在しない日々を夢に見る。

 シングルルームを予約したのになぜか用意されていたダブルベッドに戻って、自然に目が覚めるまで動くまい。そうすれば起きぬけに空腹をきちんと感じるのだ。朝食を心待ちにして眠るのはいつぶりのことだろう。