ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

トリップ

 休暇に入ってから、おもしろいほど、目つきが違う。青黒いくまは消え、上まぶたのむくみだか腫れだかも引いた。ひさしぶりに全貌を見せた黒目は、こころなしか輝いている。大げさではない。私以上に私の体調を心配する母が「すっきりしたね」と言ったのだから。

 一日の半分を三日間。眠りたいだけ眠ったら、身軽さは息を吹き返した。私の場合、ひとりで出かけたときにそれは最もよく発揮される。洋服でも食事でも、気になった店には、吸い寄せられるように入ってしまう。どこまでも歩いてゆけるような気がして、無為の寄り道をくりかえす。おかげで、勉強に集中するつもりで繁華街の片隅に泊まったきのうの記憶が、深部にはりめぐらされた地下鉄と、雨でぼやけたビル群の灯りと、鰯とゆずサワーに占められている。それでよかった。計画と効率からはみ出し、健康を祝福する休日がほしかった。涙が出るまで笑いたいような、満ち足りた夜だった。

 最愛の宇宙人と電話をした。私を善良な地球人かなにかと誤認している人々が、彼女の仕事のほうはどうかと気にかけるたび、返答に窮するという。たしかに、八時間労働および集団生活の形態とあたたかくしめっぽい風土に耐えられないそうだ、などと打ち明けて、むやみに評判を落とすわけにはゆくまい。少々すまなく思う。