ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

ITZY

 九年前に発表された、当時(あるいはいまでも)日本一の知名度を誇っていたアイドルグループのミュージックビデオを、知人は「企画もののアダルトビデオのようだ」と評したことがある。視聴したところ、売り手のべとついた思惑を見るようで、いやな感じがした。鍵穴越しに部屋を眺めるような冒頭のカメラワークからして、窃視の快楽を追体験せよとでもいいたげだ。

 アイドルはいまや聖像ではない。むろん猥褻物でもない。すなわち、欲求をかきたて、充足するための道具ではない。十代の少女を「見てはいけないからこそ見たくてたまらないもの」に仕立てあげるやりかたも、それが空前の大ヒットを生んだというこの風土も、やりきれない。そんなふうに、とめどなくじくじくと考えていた矢先、はたと出くわした新しい音楽が、K-POPグループのITZYだった。つい数日前の話だ。めざましき僥倖だ。

 五人が、歌ったり踊ったり、着飾ったり肌を見せたりするのは、日本風にいえば「君の気を引くため」ではない。たったそれだけの事実がまぶしかった。彼女らの、ことばも、からだも、うつくしさも、彼女らのためにあり、彼女らはそれをみずからよく知っているし、しんから愛している。「ICY」を何度も聴くうちに、私はちかごろ曲と同じ速さで歩く癖がついてしまった。