ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

なんでも

 駆け出しながらチップチューンの名手である最愛の宇宙人に誘われ、都内のライブハウスを訪れた。大気をびりびりとふるわせ、腹のなかまで流れこんでくる音。刺激に立ちすくんだのははじめのうちだけで、いつしか私たちの胴やかかとは浮かれてちいさく踊っていた。

 チップチューンというジャンルの特徴は、なんでもあり、だと思う。彼のつくる曲はおおざっぱにいってポップで、軽妙洒脱あるいは甘やかと形容するにふさわしいものだが、界隈では、パンクやグランジを彷彿とさせるアーティストも活躍している。詩をよむ人もある。演奏に、とぎれとぎれの歓声や話し声がまじる。この日はその半分近くが英語であった。出演者も観客も、日本語話者ばかりではないのだ。どこからきて、ふだんなにをしているのか、わからないものどうしがひしめきあって、好みの曲も、いつも聴くのとはまるでちがうのも、おもしろがって波に乗る。知らない人と知らない音にあふれた、てんでんばらばらの世界がここちよかった。

 いろいろあったほうが、なんでもゆるされていい、というようなことを彼は嬉しそうに言った。彼はおそらく自身を「なんでもあり」の「なんでも」にあたる存在とみており、認めるか斥けるかの判断をおのれが下す、という発想とは無縁らしい。好きなところだ。