ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

見えないところ

 脚のあいだが赤くただれ、シャワーの湯がしみて顔をゆがめるほど痛痒くなるという症状に見舞われ、産婦人科をたずねた。受診をいやがりつつもためらわないのは、私のもつ稀なる美点といえよう。医師は「カンジダ膣炎ですね」と説明し、問診票に書かれた抗生剤の名前を見て、「風邪でもひいたのかな? それで弱っていたときに、からだのバランスが崩れたんでしょう」とつづけた。そのころ、花粉症がおさまったばかりだった。ほどなくして副鼻腔炎に悩まされることは、まだ知らない。弱り目に祟り目の一〇月だった。

 最愛の宇宙人がいつもの長電話につきあってくれた。この疾患のもたらすこまごまとした不便な点を述べ立てながら、私は、インターネット上の「パートナーに話しづらいトラブル」といった文言に驚いていた。彼のごとく虚心に耳をすますのは、じつは難しいことなのかもしれない。「大変なんだね。男は時期によって体調が変化するってことがないから」と彼は言った。おおむねそのとおりだが、男性は楽でよろしいなどとは考えないし、他人の見えない痛みを想像しようとつとめるあなたとともにあって健康である、と返事をした。暑さに弱い頭痛持ちの彼を、炎天下の海辺に連れ出してしまった初夏の記憶が、脳裏をかすめてすこし恥ずかしくなる。